エントリーを絞るという考え方

この記事でわかること

  • エントリー(※新しく買いまたは売りの取引を始めること。)を絞ることが機会損失ではない理由が分かる
  • 入る前に捨てる条件を作る考え方が分かる

先に押さえる結論

エントリーは「全部のチャンスを取りにいく」ほど、かえって負けを拾います。野球の優秀なバッターは、ボール球に手を出さず“良い球”だけを振るから打率が上がる。トレードも同じで、入る技術より「見送る技術」のほうが成績を左右します。条件がそろわない場面を堂々と見送れることが、勝てるトレーダーの共通点です。

なぜ「何でもエントリーしてしまう」のか

チャートを開いて30分以内にエントリーしてしまう。条件が整っていないと分かっていても、「なんとなく動きそう」という感覚で入ってしまう。多くのトレーダーが経験するこの問題は、意志の弱さではなく「エントリーしないことへの心理的なコスト」から来ている。人間は「何かをしないこと」に不快感を覚える。特に相場が動いている時に傍観していることは、「機会を逃している」という強い焦りを生む。

「見送り」は損失ではない

見送った場合のコスト:0円(機会損失は「実際の損失」ではない)
無理なエントリーをした場合のコスト:損切り(※損失が大きくなりすぎる前に取引を終えること。)(損失を限定するために決済すること)額(例えば2000円〜5000円)

プロのトレーダーは「何もしない日」を持っている。その日は「損失ゼロ、コストゼロ」の完璧な結果だと捉える。

「条件が揃わない日はトレードしない」の価値

仮に1ヶ月で40回エントリーし、そのうち15回が「条件が揃っていなかった」エントリーだったとする。その15回の勝率が30%(4勝11敗)で、条件通りの25回の勝率が60%(15勝10敗)だったなら:

条件外の15回を見送るだけで、勝率が47.5%から60%に上がる。

具体的な「見送り基準」の作り方

見送り基準の例

「なぜ今入るのか」を1文で言語化できないエントリーは、ほぼ確実に根拠が薄い。「動きそうだから」「なんとなく上がる気がする」は根拠ではない。「上昇トレンドの押し目で、1時間足(1本のローソク足が表す時間単位)の水平線に支えられており、ピンバーが出た」が根拠だ。

見送りの記録をつける

効果的な練習方法として、「見送ったトレード」も記録することを推奨する。「今日14時に、〇〇という理由で見送った。その後価格は〇〇に動いた」という記録だ。「見送って正解だったケース」が積み重なり、見送ることへの自信が育つ。

まとめ

エントリーを絞ることは「機会を逃すこと」ではなく「質の低いトレードを排除すること」だ。条件が揃わない日にトレードしないという判断は、損失ゼロという完璧な結果をもたらす。「なぜ今入るのか」を1文で説明できるかどうかを基準に、チェックリストを作って見送りを習慣化することが、勝率と期待値(同じ条件を繰り返した時に平均して残る損益)を改善する最も即効性のある方法の一つだ。

実戦チェックリスト

注意点

どの記事の考え方も、単体で万能ではありません。勝てそうに見える場面ほど、損切り位置と無効化条件を先に決めることが大切です。

エントリー選別を実戦で使う時の考え方

エントリー選別は、知識として覚えただけでは結果に直結しません。大切なのは、実際のチャートで「使う場面」と「使わない場面」を分けることです。初心者ほど、覚えたものをすぐ全部の場面に当てはめようとします。しかし相場では、同じ形でも場所が違えば意味が変わります。

たとえば、よくある誤解は「迷った場面も経験のために入る」というものです。これは一見前向きに見えますが、判断の基準が曖昧になりやすい考え方です。実戦では、迷う場面を事前に除外条件として定義するという順番で考える方が安定します。

判断項目浅い見方実戦的な見方
根拠目についた理由だけで判断する複数の根拠が同じ方向を示すかを見る
タイミング今すぐ入れるかを見る待つ場所と無効化条件を先に決める
検証勝った負けたで評価する見送り後の記録、条件一致率、無駄打ち率を記録して傾向を見る

初心者がつまずきやすいポイント

初心者が一番つまずきやすいのは、1回ごとの結果でルールを変えてしまうことです。たまたま勝った場面を正解にし、たまたま負けた場面を間違いにすると、検証が積み上がりません。トレードは1回の正解探しではなく、同じ条件を何度も集めて傾向を見る作業です。

記録するときのコツ

記録には、エントリー理由だけでなく「なぜ見送らなかったのか」「どの条件が不足していたのか」も残します。あとで見返したとき、負けた理由が手法なのか、環境なのか、自分の操作ミスなのかを分けられるようにするためです。

練習方法

まずは過去チャートで20例だけ集めてください。勝ち例だけではなく、負け例と見送り例も同じ数だけ集めるのがポイントです。勝ちだけを集めると、その考え方が万能に見えてしまいます。負けや見送りを含めることで、どの場面では使わない方がよいかが見えてきます。

最初から完璧にしない

最初から複雑にしすぎると、続きません。まずはエントリー選別を1つの視点として使い、判断の前後で何が変わったかを記録します。記録できないルールは、実戦では再現しにくいと考えてください。

明日からの使い方

この記事の内容を実戦に移すときは、まず1つだけテーマを決めます。今回なら「入る理由より、入らない理由を先に決めること」です。あれもこれも同時に直そうとすると、結局どの判断が良かったのか分からなくなります。1週間だけ同じテーマで記録し、次の週に見返す方が上達は早くなります。

トレード前には、今日見る時間足、監視する価格帯、入らない条件を先に書きます。トレード後には、結果ではなく判断の質を振り返ります。勝ったけれどルール違反だったなら改善対象です。負けたけれどルール通りだったなら、すぐに変える必要はありません。

1回ごとの勝ち負けで判断しない

大切なのは、同じ基準を繰り返したときに資金が残るかどうかです。良い負けと悪い勝ちを分けられるようになると、トレードの見方がかなり変わります。

特に初心者のうちは、勝った日ほど反省が薄くなり、負けた日ほどルールを変えたくなります。しかし本当に見るべきなのは、エントリー前に決めた条件を守れたかどうかです。相場は毎回違う顔をしますが、自分の判断基準まで毎回変えると、検証ができなくなります。

「良い球だけ振る」から打率が上がる

一流のバッターは、来た球をすべて打とうとはしません。ボール球を見送り、甘い球が来たときだけフルスイングする。だから打率も長打も増えます。トレードでの“見送り”はこれと同じで、決して機会損失ではなく、勝率を守るための積極的な選択です。バスは次もまた来ます。発車寸前のバスに飛び乗ろうとして転ぶより、条件のそろった次の便を待つほうが、結局は早く着くのです。

動画解説

このテーマに関連する実際のチャート動画です。文章で考え方を確認したあと、動画で「どこを見て判断しているか」を確認してください。

動画解説:すべき・したい・できるエントリーを分ける

エントリーを、すべきエントリー、したいエントリー、できるエントリーに分類。勝つ目的があるなら、取れる場面ではなく取るべき場面だけを選ぶ。

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