地方に行くと、その土地の人が魚や野菜の自慢をしてくれることがあります。

僕は料理をするので、そういう話を聞くのがわりと好きです。
「この時期はこれがうまい」「この魚はこっちの海の方が脂が乗る」「この野菜は水が違うから味が違う」みたいな話です。

一度始まると長いこともありますが、あの話には面白さがあります。
同じ日本でも、場所が変われば獲れるものが変わる。季節が変われば、同じ海でも釣れる魚が変わる。だから地元の人ほど、その土地の「今」をよく見ています。

マーケットも、海に似ている

トレードもこれに近いと思っています。

GoldにはGoldの海があり、ドル円にはドル円の海がある。
ビットコインにはビットコインの流れがあり、株価指数には株価指数の癖がある。

同じライン、同じインジケーター、同じエントリー条件を使っても、マーケットが変われば結果は変わります。
それは手法が悪いというより、その釣り方と、その海が合っていないだけかもしれません。

同じ竿で、すべての魚は釣れない

青物を狙うなら、潮の流れを見る必要があります。
根魚を狙うなら、岩場や底の形を見る必要があります。
小さな魚を狙う道具で、大きな魚を力任せに釣ろうとしても、うまくいかないことが多い。

トレードも同じです。

短い値幅を狙う手法なのに、大きなトレンドの途中で無理に逆張りをする。
反発を狙う考え方なのに、値幅が出やすいマーケットで浅い損切りを置く。
レンジ向きのロジックなのに、一方向に走っている相場で何度も止めようとする。

これでは、魚がいない場所で釣り糸を垂らしているようなものです。
努力しているのに釣れない。道具を変えても釣れない。餌を変えても釣れない。
でも本当は、立っている場所が違うだけかもしれません。

見るべきは「手法」だけではない

勝てない時、人はすぐに手法を変えたくなります。

でも、見るべきなのは手法だけではありません。

こういう「海の性格」を見ずに、手法だけを評価すると判断を間違えます。

釣れない理由が竿なのか、餌なのか、潮なのか、場所なのか。
そこを分けて考えないと、改善の方向がずれてしまいます。

Goldの海、ドル円の海

たとえばGoldは、値幅が出る時は一気に出ます。
反転も強く、ヒゲも大きく、短時間で景色が変わることがあります。

一方でドル円は、節目や時間帯、金利やニュースの影響を受けながら、比較的読みやすい流れを作る場面もあります。
もちろん毎回そうなるわけではありませんが、マーケットごとに「出やすい表情」は違います。

だから、Goldでうまくいった感覚をそのままドル円に持ち込むと噛み合わないことがある。
逆にドル円で通用した慎重な待ち方が、Goldでは遅すぎることもある。

これは料理でも同じです。
脂の強い魚と、淡白な白身魚では、同じ焼き方をしても仕上がりが変わります。
火加減も、塩の量も、寝かせ方も変わる。

素材が違えば、扱い方も変わる。
マーケットが違えば、ロジックの活かし方も変わります。

自分が狙う魚を決める

大事なのは、万能の竿を探すことではありません。

自分は何を狙うのか。
どの魚を釣りたいのか。
その魚は、どの海に多いのか。
どの時間帯に動きやすいのか。
どんな潮の時に狙いやすいのか。

トレードで言えば、どの値動きを取りたいのかを決めることです。

ここが決まると、見るべきマーケットも、時間足も、使う道具も変わります。

釣れない時ほど、海を見る

うまくいかない時に、すぐ手法を捨てる必要はありません。

もしかすると、その手法は別の海なら機能するかもしれない。
別の時間帯なら合うかもしれない。
別のボラティリティなら、急に生きるかもしれない。

逆に、今まで釣れていた手法が急に合わなくなることもあります。
季節が変われば、魚の場所も変わる。潮が変われば、食い方も変わる。マーケットも、同じ状態がずっと続くわけではありません。

だからこそ、トレーダーは自分の手法だけでなく、立っている海を見なければいけない。

勝てない理由は、手法が悪いからとは限らない。自分の釣り方と、今のマーケットが合っていないだけかもしれない。

トレーダーに必要なのは、すべての魚を釣れる万能の竿ではないと思います。
自分が狙う魚を決め、その魚がいる海を知り、その海に合った釣り方を磨くこと。

相場もたぶん、それと同じです。

※この記事は相場との向き合い方を説明する教育目的のコラムです。特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

← 記事一覧に戻る

記事へのリクエストや問い合わせはこちら

知りたいテーマ、記事の感想、相談したい内容があればLINEから送れます。

LINEで送る